MGB Buyer's Guide for Bigginers by Corkey.O
MGB初心者のためのバイヤーズガイド
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MGB購入のポイント




4. MGB購入のポイント

     さてMGBに関する知識も手に入れ、あらためて自分の選択にも自信を持った。いよいよMGB購入計画を実行に移す時である。しかし勇んで雑誌をめくったりショップに駆けつける前に、今度は購入に先立って知っておいた方が良い事柄がある。


価格相場
  MGBの国内価格相場は、平成不況の中にあってわずかずつではあるが上昇傾向にある。
これに拍車をかけているのがMGBの再生産ホワイト・ボディ「ヘリテイジ・ボディ」の存在である。これの登場によって機構部品は無事だがボディがサビだらけ、という個体の復元が可能になったのである。
本国イギリスでもヘリテイジ・ボディ使用MGBの価格は1万ポンドをゆうに越えているが、これは日本でも状況は変わらない。
基本的にウレタンバンパー・モデルは底値100万円前後から上限150〜170万円程度で通常の中古車と同じく年式が新しいほど値が上がる傾向にはあるものの、メッキバンパー化されたものは20〜40万程度付加されていると考えておくといいだろう。
これがメッキバンパーとなると200万円前後が相場であり、安くても150万程度。これ以下だと個人売買以外にはないだろう。逆にヘリテイジボディ使用などのレストアレーション済車だと250万円を越える物件も散見できる。
どちらにしても所詮中古車であり、個体差は大きいと思っておいて損はない。と言うことは自分の目で実際の物件を確かめることが出来るのなら得な買い物が可能だが、逆であればとんでもない物件に手を出すことにもなりかねないというリスクが存在することを忘れてはならない。

まず人を見る
  では具体的に「ハズレ」を引かないためにはどうすれば良いのだろう。最も望ましいのはMGBに(もしくはヒストリックカーに)詳しい知人・友人に同行してもらうこと だ。しかし不幸にしてそのような友人を持たない場合は、基本的に個人売買は避けた方が賢明だろう。
 機械製品は持ち主が代わると途端に故障を起こすというのは、往々にして真理である。その時は自分一人で何とかしなければならない事態に立ち至るが、それが可能なくらいならそもそも「ハズレ」など引かないだろう。そうした時に頼りにするのは結局購入した店と言うことになる。
 最初からそれを見越してショップでの購入を考えている場合でも、同じ理由から物件よりもまずそのショップを見ることをお勧めする。特に初心者が買う場合には、修理部門を備えたショップでの購入が後々のトラブルに対する鍵になる。
 後々のメインテナンスで世話になるだけではない。「ガレージ・クィーン」が修理部門から嫌われるのは古今変わりのない事柄で、いい加減な物件を売ることについては修理部門から営業部門に対してクレームが付くものだ。そもそも信頼のおけるショップであれば客とのトラブルを避ける上でも購入時にその旨を注意してくれるだろう。
 もう一つショップで注意するポイントは、MGB以外の売り物である。ヒストリック・スポーツの中では単純かつ原始的な構造であるMGBだが、現在のクルマしか知らないような店ではやはり手に余る部分はある。またヒストリック・スポーツではなくてもMINIあたりが多く置いてあるような店であれば、同じ英国車ということで構造的に似通った部分は少なくないから安心材料となる。
一般論で言えば、信頼がおける人(店)は信頼がおける商売をするものである。
いよいよクルマを見る
  まず決めるべきは、「何を求めるか」である。
コンクール・ドゥ・エレガンスでの入賞を狙うのならメッキバンパー・モデルで、しかもオリジナリティの高い個体を探すのが早道である。
各地で行われているヒストリックカー・イベントへの出場を意図しているのなら、通常参加資格の基準を1970年に置いているケースが多いため、自動的にLG(R/G)以前のモデルということになる。
 さらに100km程度のツーリングがスケジュールに組み込まれていることが多いから、基本的なメカニズムには問題がないものを選ぶ必要がある。
 チューニングを楽しむのなら、UB2(R/B Later)は素材の出物が多く価格も手頃で、さらにわずかな改良でも性能の向上がはっきりと体感できるからチューニングのしがいがある。しかも通常チューニングによる動力性能の向上は車体に余分な負荷を加えることと表裏一体を成すものだが、日本に存在するUB2は排ガス対策で本国仕様よりも性能の劣る対米仕様を基にしているから、本国仕様の性能に戻す範囲では耐久性を劣化させる懸念とは原理的に無縁である。

 さてこうして予算と自分が求めるMGBと求めるポイントが定まれば、次は出物を探して物件の見定めである。信頼のおけるショップに頼んだにしても、やはり自分の目で見て納得できることが一番だからだ。
 まずすべきことは、シャーシィ・ナンバーとエンジン・ナンバーの確認である。製造されてから日本に送られて登録されるまではタイム・ラグがあるのが普通であるから、単純にショップの言う「〜年式」というのは当てにはならない。例えばMGB最終号車がライン・オフしたのは1980年10月22日なのだから、日本で散見できる「81年式」などというのは製造年を表してはいない事が分かる。
 メッキバンパー・モデルでもフロント・グリルなどが交換されていることはよくある話で、これもシャーシィ・ナンバーの確認などで見分けることが可能であるし、エンジンとシャーシィの年式が符号しているかどうか確認することで、過去におけるエンジンの載せ代えなども発見可能である。

    編集部注:MGB 1970年代以降H/G,R/BについてはGHN5を示すプレートが2箇所はついており、比較的容易に確認できる。また、R/B日本向けを含むモデルでは、ドアを開けたサイドステップ上部に製造年月の目安のプレートが貼られている。
    エンジンNo.については、エンジンブロック右側にプレートが貼られていれば確認しやすい。GHNナンバー及び、エンジンナンバーについては当サイト内の資料などを参照されたし



 さてモデルの特定ができれば、それに従ってオリジナリティのチェックが可能になる。「オリジナルにはこだわらない」という人でも、付けられている部品がオリジナルなのか後付けなのかを知っておくことは、後々の修理などの際には役に立つことである。
 特にエンジン・ルームは重要である。UB2の場合オリジナルのゼニス・ストロンバーグ・キャブレターをSUやウェーバーに交換しているケースも少なくない。これは自分で交換する手間と費用は省ける反面、峠などで荒く乗られている可能性もあるし、またキャブレターのオーヴァ・サイズに起因するトラブル(プラグのカブりや、低い燃費など)の元になる可能性も否定できない。
 オルタネーターもオリジナルのルーカス製か日本製かで信頼性に大きな差があるし、ラジエターの電動ファンも水温によって2基が確実に作動する事を確認する必要がある。無論ヒーターやワイパーなど、その他の機器の作動も確認する必要があることは言うまでもない。

    編集部注:電動ファンについては、国産流用や、ケンローなどのアフターパーツに交換することが容易なので、さほどオリジナルに神経質になる必要は無いが、作動が確実であることを確認すること。また、オリジナルの配線では、Lucasのリレーがネックとなるので、こちらは国産などに交換するか、配線を別途設けるのがよいと思われる。


 エンジンのチェックと並んで重要かつ関心が高いのが、ボディの状態だろう。ヘリテイジ・ボディの誕生によって「新品ボディのMGB」を作り上げることも可能になったとは言え、それを目的としているのでもなければボディは無事であることに越したことはない。
 これには3つのチェック方法がある。最初が目視チェック。次がパテによる修理で隠されたサビを見つけ出す方法。そして実際の試乗による確認である。MGBのボディでサビが出やすく、また影響も大きいのはサイド・シル部である。特にトゥアラーの場合MGBはモノコック構造を採用したオープンカーとしては初期のものに属するし、ボディ強度の上でサイド・シルに依存している割合は高い。
 まあサイド・シルの表面に水脹れが幾つか見られる程度ではさほど心配する必要はないだろうが、それがあまりに大きく数多いようだと危険信号と考えた方がいいだろう。ましてサビて穴が開いているようなのは論外である。サビというものは進行度合の軽いものならば表面的にペーパーで落としてその上をエポキシ・パテなどで整形し、塗装を施してしまえば事実上直すことが出来る。
 しかしそれがあまりにひどくなったり、またボディのへこみなどがある場合にはパテの量も多くなる。ところがそれを外観から判別することは極めて困難であるにもかかわらず、経年変化でボディが(実はパテが)割れたり、サビが浮き出てきたりというトラブルの種になりかねない。

 そこで登場するのが磁石である。使い古しの若葉マークでも良いし、冷蔵庫の脇にメモを留めるクリップでも良い。パテの層の厚みによって磁石の吸着力には差が出る道理だから、怪しげなところにそれを当ててみることでパテの厚みを推定することが可能になるという仕組みである。実際にこの原理でパテの厚みを計測する器具も市販されている。

 ただし注意が必要なのは「Mk1/2 までのMGBのボンネットはアルミ製である」という点である。当然磁力は効かないということは言うまでもない。ほとんどの部品が再生産されているMGBではあるがこの部品は欠品パーツで、しかも高価である。まれにLG以降のクルマでこのアルミ・ボンネットに換装されているケースもあるが、かなり幸運であると言える。

 こうしたチェックが一通り終われば、次は下回りのチェックに移ろう。過去の事故を暗示するような歪みなどをチェックすることはもちろん、MGBのウィーク・ポイントの一つであるフロント・ロアAアーム付根のラバー・ブッシュやステアリング・ラック・ブーツの状態の確認など、経時劣化を起こしやすいラバー部品を重点的に確認しておくと良いだろう。さらにクルマの下に潜ってフロア・パネルにサビがないかどうか確認できれば言うことはない。
 MGBのフロント・サスペンションには左右4個所ずつのグリース・アップ・ポイントがあり、通常5000kmごとのグリース注入が必要である。これを怠っていたり、現代のパワーステアリング付のクルマよろしく据え切りをしていたようなクルマだと、最悪キング・ピン部にガタツキが出ることがある。
 これを調べるにはフロント・タイヤを両手でねじるようにして揺すってみるといい。これでタイヤがガタガタと動くようだと、遠くない将来にハブ全体の交換という事態が襲ってくることになりかねない。

 しかし最後に決定するのはやはり人間の感覚である。それには試乗してみるのが一番である。逆に言うと、試乗もさせてくれないようなクルマはそれだけで避けた方が良いとすら言える。
 もっとも、ナンバーが切れているなどの理由があれば別問題だが。ただし現代のクルマのようにボディ強度が確保されている訳ではないのだから、少々のスカットル・シェイクやキシミ音程度に目くじらを立てていてはMGBを所有することなどできないことは忘れてはならない。
 異音/ガタ付きやクラッチの滑り/ブレーキの効きなど気になる点は、ショップの人間にどしどし質問すべきである。妙に遠慮して聞かなかったばっかりに、購入後トラブルのタネになることほど馬鹿馬鹿しいことはない。

 ここでチェックしなければならない重要項目が「電磁式オーヴァ・ドライヴ」である。
 トランスミッションに組み込まれたユニットによってMGBの高速巡航性能を向上させるこの装置はUB2では標準装備だが、それ以前のモデルではオプションである。しかし日本にあるMGBの多くには装着されていると考えて良い。
 このユニットはシフトノブ頂部スライド・スイッチ(UB2)/ワイパースイッチ組み込み(BM‘74〜UB1)/インパネ右端トグル・スイッチで作動し、3速4速の両方で作動させることができる。(UB2は4速のみ)
しかしユニット内蔵のソレノイド・バルブや作動用油圧を発生させるプランジャー・ ポンプの不調などにより作動不能となるケースも少なくない。部品交換や洗浄などで簡単に直る場合は良いが、内蔵コーン・クラッチなどが問題の場合は最悪アッセンブリィ交換が必要となることもある。
 また作動しないだけならば装着されていないのと同じ事なのだが、作動はするが解除ができないとなると事態は厄介だ。この状態で後退すると、ユニット内蔵のワンウェイ・クラッチを破損して走行不能に陥ってしまうからだ。
作動は4速AT車のODに似ており、60km/h以上でスイッチをONにして1〜2秒後にエンジン回転が500rpmほど低下し、OFFにして瞬時に元に戻れば正常である。これが異様に時間がかかるようだとユニットが痛んでいる可能性がある。

MGBのエンジンは基本的に低中速トルク重視型であり加速時に段付きなどはないが、ウェーバー・キャブ装着車で段付きが見られる場合はプライマリー/セカンダリーのジェット・セッティングが合っていない可能性がある。またゼニス・ストロンバーグやSUキャブ装着車でこの症状が出る時は、キャブ頂部のキャップの中に入っているべきダンパー・オイル(エンジン・オイルで良い)が足りなくなっている可能性が高い。
またUB2に用いられているレヴ・カウンター(タコメーター)はエンジン始動時に動かないという悪癖を持っているが、ガラス面を軽く叩いて動くようであれば大事に至ることはない。

中古車を購入する際に注意すべき点は他にも山のように存在する。しかし今まで述べてきた事柄をクリアするようであれば、基本的に大きな問題はないと判断して良いだろう。


5. おわりに

     最初に述べたように、MGBは「スポーツカーの教科書」である。
    それはスポーツカーと暮らす、つまり探す/買う/乗る/直す/調べる/集める/集うという趣味の対象としてクルマと付き合う上で関係するあらゆる要素を、初心者にも分かりやすく平易に教えてくれるという意味である。
     しかし平易ということは、浅いということと同義ではない。むしろ四半世紀にも及ぶMGの歴史を背景に持つMGBの深さは、他車の追従を許さないほどのものがあると言っても過言ではない。
    確かにサーキットでのコンペティションやミッレ・ミリアなどの世界的なヒストリックカー・イヴェントなどを視野に入れればMGBが物足りなくなることもあるだろう。しかし教科書で合格点を取れない者が、いきなり一流大学を受験しても合格はおぼつかないものだ。
     「いつかはセヴン」「いつかはフェラーリ・カップ」も結構。しかしまずは「ABCから始めよう」。
    MGBがあなたを自動車趣味の世界へと誘ってくれるだろう。

Corkey.O

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(MGB V8conv. called "Bee-3",Yotsukaido-CHIBA)
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