Q&Aコーナー

カリスマMGBオウナー
いわぞう氏に聞く



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MGB Trouble Kalte

 

Q&Aコーナー page.1

この記事はこちらに寄せられた投稿を元に編集したものです
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いわぞう様、こんにちは、相談者A(仮名)です。
やっとMGBが帰ってきました。が...まだまだ不具合がありまして。またまた、すがる思いでメールしています。その不具合の点なのですが。


1.オルタネーター
 バッテリーがパンクしたのは電圧がアイドリング時に17Vあり高いから爆発したのでしょうか? その場合、レギュレータの交換? それともオルタネータ一式交換の交換になるのでしょうか?

2.ウェーバーキャブレター
 スプリット仕様にしてあるのですが、キャブとマニホールドの取り回しはこれで大丈夫なのでしょうか? ウェーバーのメインジェットがバイク用(前オーナーはバイク屋)ですが問題はないですか?
 ウェーバーの燃費は今現在5km/Lなのですが、そもそも燃費は悪いのですか? やはりSUキャブの方が良いのですか?

3.オーバードライヴ
 前オーナーが1速でも入るように改造してあるのですが、特に問題は無いのでしょうか?

 長々とそれも沢山の質問をしてしまい、申し訳ありません。お答えいただける範囲で構いませんのでどうぞよろしくお願いいたします。



お待たせしました。お役にたてれば良いのですが──以下。

 やはり眠っていた古いを興すには、それなりの準備が必要なのですね。クラッチのベアリングは潤滑とは遠縁ですが、シリンダを含めたバルブ機構や、各種グリスアップがなされた箇所(たとえばウォータポンプベアリング、ギアボックスなど)は、いきなり動かすと良からぬ事態を招くこともありますもんね。

1.オルタネーター

 さて、オルタネータ。
 アイドリング時の電圧が17Vとは尋常ではありませんねえ。バッテリーだけでなく、発電された電気はクルマの多くの部分に供給されていますから、たとえばコンタクトポイントやメータ類にも、なんらかの影響があるかも知れません。と、これらは可能性ですが。
 オルタネータについて書いてみますね。

 三相交流発電器であるオルタネータは、従来の直流ダイナモ(自転車の発電器ね)に比べて、低速回転でも安定した起電をします。
 交流電流では自動車に使えませんから、ダイオードという半導体を使って直流電流に整流し、ボルテージレギュレータによって発電された電圧を制御しています。
 オルタネータの故障の多くは、このダイオードが逝かれてしまい、整流できなくなる──すなわち直流電流が発電できなくなる事で、過電圧が発生する事は少ないものです。
 したがってバッテリーがパンクした原因は、おそらくボルテージレギュレータの不良によるものと思われます。

 レギュレータは、発電された直流電流を12-14Vに制御するもので、接点式、無接点式、カーボンパイル式に分けられます。
 接点式はポイントを持つリレー回路が遮断と接続を繰り返し、発生電圧を抑えます。無接点式はリレー回路にトランジスタを用い、ポイントの開閉を行わずに回路の断続を繰り返して、発生電圧を抑えます。
 前者はリレーポイントの開閉時に小さな火花が飛び、いずれはポイントが焼けてしまい、ポイントギャップが変化したり(制御電圧が変化しますね)、遮断されたままになります(不動)。
 後者はポイントを持たないトランジスタですから、火花は出ません。しかしシリコンを利用した半導体ですので、比較的熱に弱く、経年の劣化で不良を生じるケースもあります。
 三つめは、オルタネータの軸部(起電流の経路)にカーボンパイルを用いた、一種の抵抗器です。薄いカーボンを何層にも重ね、その重ね圧力によって通電抵抗値が変化し、適正な直流電流を出力する仕掛けで、近年のオルタネータは、ほとんどコレ。
 エンジンルーム内部にボルテージレギュレータの箱が見当たらないのは、すなわちオルタネータにこの仕掛けが内蔵されているワケです。トランジスタ式も同様に内蔵型がほとんど。

 さて、79年MGBではルーカス社製のオルタネータは、18ACRという型番になります。
 1969年モデルから16ACRが適用され、それまでの外付けレギュレータが内蔵されました。シャシーナンバーでは、G/HN4-158371以降ですね。

 ということは、たぶん過電圧の原因は、オルタネータ背面のレギュレータユニット(トランジスタ回路)に不具合があるためと思われます。
 回路の修理は厄介なので、この回路をアッセンッブリーで交換することになります。「レクティフィラー」(整流器)という名称で、MOSSなどのパーツリストにはありますが、在庫の有無は不明です。
 なお、オルタネータは16ACR、17ACR。18ACRの3種が用いられ、それぞれに微妙な型番が異なります。パーツリストなどで確認できますよ。見分け方が判らないときには、ご連絡ください。
 電気周りの部品は、本体ごととなると、英国でも入手困難な場合があります。国産のモノ(三菱やデンソー)を流用するのも良いかも知れません。

 それから──えーっと、ずいぶん改造されているMGBのようなので、老婆心なのですが、オルタネータのプーリー径が変更されていたら厄介です。
 たとえば低速回転域での起電力を大きくしたいがために、直径の大きなプーリーに交換されていた場合、正常な整流器では及ばなくなり、またしても故障となります(よく、ウォーターポンプでプーリー交換が行われています)。
 国産品に交換する際にも、プーリーの直径とゴムベルトの長さ、オルタネータ自体の位置関係をしっかり設計して取りつけたいものですね。

(おっと、9時だ。。。ちょっと休憩)
ども、、帰ってきました。

2.ウェーバーキャブレター

 続いてウェバーキャブレター
 写真をありがとうございます。拝見したところ、確かにスプリットウェバーなのですが、マニホールドはどなたかが自作されたようですね。
 排気はMGB専用のLCB(ロング・センター・ブランチ=タコ足)のように見えますから、これは問題無いと思います。一方、吸気は溶接の跡が見えるモノで、位置的にはパーコレーションを招かなければ使用できると思われます。
 MGではスペシャルチューニングが専用のマニホールドを出しています。
 添付した写真はショートモデルと云って、ジェットからインテークバルブまでの距離が短いタイプ。多量の燃料が吸入されますので、加速向きのマニホールドです。
 余談ですがロングモデルは、インテークバルブまでの距離が長く(マニフォールド自体が長い)吸入混合気の流速が速くなり、高速回転で多量の燃料を吸入する、いわば高速向きのものです。
 マニフォールドに必要な特性は、如何にスムースに混合気を送り込むか。
 そのために管の内部の表面をナシ地に仕上げたり、あるいは継ぎ目の段付きを無くしたり、あるいはキャブレター自体の温度を上昇させないような材質を選定したり、そんな仕掛けがしてあります。
 MGBはリターンフロー型のシリンダヘッドですので、インテークポートは、入り口から間もなく「くの字」に曲がり、インテークバルブへ繋がっています。実はコレが吸入の妨げになって、大きな出力が出ません。
 そこで大型のキャブレターを付けたり、あるいはクロスフロー型のヘッドを乗せたり、と云う改造がなされます。

 ところでウェバーのメインジェットは、エンジンのコンディションによって全く変わってきます。加速ジェットも同様ですね。キャブの口径に応じた、総合的なセッティングが欠かせません。
 とりわけウェバーやデロルト、ソレックスは固定ジェットなので、ジェットの選定を誤ると、ほとんど満足に走れません。ボク自身、吸気に始まって排気、カムプロファイル、しまいにはヘッドやピストンまで考えるハメになり、その果てに街乗り。何を目指すか、きちんと考えることが肝要という事が判りました。

 結論めいた事を言えば、ロングストローク+リターンフロウのBMCエンジンは、SUキャブレターが最も相応しく、扱いやすいと思います。
 SUキャブは、可変ジェットですから、走行条件に応じて──言い替えればエンジンの調子に応じた適正な混合気を供給してくれる、非常に有能な気化器です。これを進化させたモノが、ゼニス・ストロンバーグですね。
 ゼニスキャブはMGB遣いの中ではヘボ扱いがなされていますが、実のところ、とてもよく考えられた様々な自動制御機能を持つ気化器で、きちんと整備して正常に作動すれば、ラバーバンパーのMGBでもトップエンドは軽く140km/hをマークします。

 気化器は、標準的なMGBの場合、1-1/2"径のSU-HS-4*2が適正です。少し口径の大きい1-3/4"径のSU-HS-6*2にすれば、高速におけるトップエンドでは少し出力がアップしますが、低速、中速回転では、あまり変化はありません。
 SUキャブレターは、吸入負圧を巧みに利用した気化器ですので、他の事をするよりエアクリーナーを効率の良いものに交換してやるだけで、体感できるほど加速能力はアップしますね。
 燃費は、きちんと他の部位(タイアやクラッチなども)がきちんと整備されている限り、高出力と燃料消費量は比例します。スタンダードMGBでSUを使った場合、リッター当たり10キロは走るでしょう。
 ウェバーでは、アクセルを煽った分だけ生ガスが出ますので、まあ5キロ前後でしょうか。かなり不確実な話ですが──。


続いて・・・

3.オーバードライヴ

 MGBのオーバードライブ(OD)は、一般的な5速ギアと異なり、4速のギアセットのアウトプット側へ、にODユニットが追加されたものです。ODのコーンクラッチ機構はオートマチックトランスミッションと同じような構造で、シフトノブ上のスイッチによる電気信号を受けて作動します。
 結論を先に云うと、1速でも作動するODは様々な故障を招きやすい、となりましょう。なぜなら──。

 ODの作動を見ると、シフトノブ上のスイッチによってODユニット下部のソレノイドバルブに電流が流れ、油圧バルブが開きます。油圧がかかるとコーンクラッチは遠心力によって作動しギアを減速、バルブが閉じるとコーンクラッチはスプリングに引っ張られて、通常のギア駆動に戻ります。
 ギアが、もしも4速、または3速だった場合は、ギアボックスのアウトプットシャフトを回転させている駆動トルクは、通常のギアによって小さくされていますから、コーンクラッチが作動しても、ODに大きなショックはありません。
 もしも2速、1速で繋がれたアウトプットシャフトだった場合は、その逆に、いきなりコーンクラッチに衝撃が及び、悪くするとコーンクラッチの滑りや破損を招きます。
 ボクの経験では、コーンクラッチが不調になると、リバースギアを使った際、コーンクラッチが滑ってしまい、クルマが動かなくなりました。リバースギアに入れたままODユニットが壊れたら、MGBは常にODを使用して走る事になるので、つまりは事実上、走行不能に陥ります。

 さらにODユニットは、点火と吸気に関連を持たせてあります。キャブがサイドドラフトのウェバーに換装されている場合は、その由はありませんが、点火タイミングを司るデスビのアドバンス機構は、その動きが設計通りになっていません。
 詳しくはウェブページを参考にしていただければ良いのですが、簡単に説明するなら・・・。
●オーバードライブを解剖する!
http://www.zeke.ne.jp/~glitter/main/html/mgb/iwazou/5mile-od.html

 エンジン回転や加速、減速による排気ガスの一酸化炭素濃度を調節するため、ODスイッチのオンとオフによって、デスビの進角装置の反応を追随させてあります。ゼニスキャブで、厳しい北米の排ガス規制をクリアするために考えた、当時の苦肉の策なのでしょうね。
 この点は、キャブがゼニスでない限りは無関係なのですが、ウェバーにせよ、SUにせよ、換装時にインテークマニホールドの負圧を計測するバルブを撤去した時点で、デスビは、そのエンジンの理想的な点火時期と異なった進角を行う結果となっています。
 が、ODユニットは1速でも作動するようになっている事は平気です。しかし、1、2速からいきなりODスイッチを操作しないほうが賢明のようです。

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ふじた岩ぞう
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