「岩ぞう」シリーズ
ゼニスの弱点−オートチョーク編
ゼニスストロンバーグはタコか?
- ゼニスの弱点の最右翼は、やっぱり「オートチョーク」みたいなんです。
- チョットまた難解なお話になるんですけど、「オートチョーク」の作動は次
のような概略です。
- まず「バイメタル・バネ」は膨張率の異なる複数の金属を張り合わせたモノで、
渦巻きバネにした場合、冷却水によって加熱されると、渦が巻き込むようになっ
ています。そしてバネの端は、常に寒冷時には「チョーク・ジェット」に燃料が
導かれるような仕掛けになってるんです。だから「オートチョーク」なんですね
。
- さて、ゼニスには「バキューム・キック・ピストン」という負圧ピストンがあっ
て、バイメタル・バネの端と繋がっています。これはキャブレターのポート付近
の負圧を利用して、バイメタル・バネを引っぱり、混合気の濃度を調節する=チ
ョーク作用を調節するモノです。さらに「ファースト・アイドル・ピン」は「キ
ック・ピストン」の動きを制御するシロモノで、アクセル・ペダルの動きに合わ
せて作動します。では寒い日にエンジンを掛けてみましょう・・・・。
- 1)始動前、アクセルペダルを1回踏むと「ファースト・アイドル・ピン」が
リリースされ、バイメタルバネの力で「チョーク・ジェット」に燃料が導かれる
ように支度されます。
-
- 2)セルで始動すると、キャブのポートに発生した負圧によって「バキューム
・キック・ピストン」が吸い動かされ、バイメタルバネとの張力の釣り合いがと
れた位置まで、「チョーク・ジェット」に導かれる燃料の量を抑制します。
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- 3)やがて冷却水の温度が上昇し、バイメタルバネの張力は減退。すると更に
「バキューム・キック・ピストン」は吸い動かされて、「チョーク・ジェット」
の燃料の量を減少=チョーク作用を終息させます。この過渡期にアクセルペダル
を動かすと(=加速すると)、チョーク状態では混合気が濃過ぎて失火します。そ
の際、一時的にチョーク作用をなくするために、「ファースト・アイドル・ピン
」をリリースし、ポートの負圧変化に応じて「バキューム・キック・ ピストン
」はバイメタルバネの張力を越えて引っぱります。 再び(チョーク状態の)アイ
ドリングに戻ったときには、またバネと負圧の釣り合いがとれた=すなわち適量
のチョーク作用を行い始めます。
-
- う〜ん、やっぱり長くなりました(^^;
詰まるところ「オートチョーク」は、外
気温度と冷却水温度、バイメタルバネの張力、ポートの負圧、およびキックピス
トンの質量が、自動的にチョークの混合気量を制御してるワケなんですね(^o^)
まあ、理に適っているとはいえ、まったくこんな複雑な仕掛けをよくも考えた
ものデス・・・・たしかに正常に作動すれば便利この上ないんですが・・・(@_@;
-
- じゃ、トラブルはってえと・・・・。一概には言えないんですけど、この「バイ
メタル」が阿呆になることが多いようですね。その他「キックピストン」の頭の
シール漏れで、ポート負圧が計量できないとか、冷却水の入ってるウオータージ
ャケットのシールがイカれて、水漏れとか・・・・。
- よくあるケースは、「効きっぱなし」なんです。半ば確率論なんですけど、一番
多い(と思う)「バイメタル阿呆」の場合、水温が上がっても張力が減退しない
んですよ。それはピストンが「無チョーク状態」まで動けないってことですから
、すなわち「効きっぱなし」。ところが、それじゃあアイドリングが高すぎるっ
てんで、スロットル・アジャスト・スクリューでスロットルを絞り込んでお茶を
濁す。更にゼニスには「アイドル・エア・レギュレータ」っていう排ガス対策の
ネジが付いてて、アイドリング時の空気量を2次的に、かつ任意に調節できるん
です。これをスロットル・アジャストに併せてグリグリねじれば、大抵の「効き
っぱなし」は埋没させることが可能なんです。目に見えるのは、タコメーターの
数字だけですから。
-
- でもね、エンジンが回るのは、結局インマニが発生した負圧で吸い込む混合
気の質と量ですから、たとえ「効きっぱなし」であっても走ってりゃイイじゃん
、というのが本音かも知れません(^^;
- そうそう、たしかゼニスの「マニュアル・チョーク・キット」っての売ってまし
たよ、英MOSSで。キックピストンの先の要の箇所を、直接ワイヤーで引っぱる、
単純な部品でした。件の友人は、それにコンバートして機嫌良くゼニスを使って
います(^o^)v
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