Q&Aコーナー

カリスマMGBオウナー
いわぞう氏に聞く



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MGB Trouble Kalte

 

Q&Aコーナー page.2

この記事はこちらに寄せられた投稿を元に編集したものです
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 相談者A(仮名)です。
 今朝、MGBが止まってしまいました。
 どうやらプラグがカブってしまうみたいで。。プラグを磨いて難を逃れたのですが。
 それと...オイルキャッチタンクについてです。
 岩ぞうさんはオイルキャッチタンクとやらはお使いになったことありますか? もしくはお聞きになったことありますか? 汎用のもの(ホース内径確認)を使用して問題ないのでしょうか。。?


 MG−Bの症状は、4本あるプラグの内1本だけカブり、乾いた煤が付着している。ブローバイガスの取り回しは、エアクリーナーにホースが入れてあるが、それが原因かと思い、オイルキャッチタンクを設けたい。
 1.オイルキャッチは付けないとならない?
 2.取り回し自体も、これで良いと判断できない?
 3.岩ぞ〜さんはキャッチタンクをどうしてはずされたのですか?


 はいはい、では、以下──。

 なんと、止まってしまいましたか!
 むむむ。。。

 プラグがかぶってしまう原因を考えねばなりませんね。
 症状を見ていきましょう。お話の「2.MG−Bの症状は、4本あるプラグの内1本だけカブり、乾いた煤が付着している。」が参考になります。
 ...と、素朴な疑問なのですが、通常、プラグがカブるという症状は、失火(スパークしない)が起きたために点火プラグの電極が混合気で湿ってしまいます。ガソリンは揮発性の液体ですが、カブったプラグの電極は、数十分の程度では「乾いた」状態にはならないものなのですね。
 「乾いた煤」が付いているということは、その点火プラグはスパークしているのではないかなあ。あるいは完全な失火ではなく、不規則に失火と点火を連続している状態が考えられます。

 ブローバイガスと煤の関連性は、実際のところ(残念ながら)ほとんどありません。
 エアクリーナーに導かれたホースから吐出されるガスとオイルによって、クリーナーエレメントが目詰まりを起こすことはあっても、点火プラグへ及ぼす影響は無く、もしあったとしても、4本中の1本だけということは無いと考えられます。ちなみにMGBでは、ブローバイホースはエアクリーナーへ取り廻してあります。

 さて、ランダムに失火をする原因です。
 えーっと、この症状だけを見て判断するには、あまりにも可能性が多く、ちょっと書き切れませんが、ありがちな原因だけ書いてみますね。
 「乾いた煤」は、ガソリンのカスのようなもので、すなわちカーボンの一種。炭化水素や一酸化炭素にいろんな不純物(オイルなど)が混ざって「煤」なっているのですね。やがては堆積し、ランオンなどの一因となります。
 ガソリンのカスは、混合気の不完全燃焼によって生まれます。
 不完全燃焼は、点火プラグの失火、点火時期の狂い、濃すぎる混合気、圧縮圧力の不足、低すぎる燃焼温度などによって招かれます。これらのいずれかが今回の問題である「ランダムに失火する」の誘因子であることは間違いなでしょう。

 では、どこを診れば良いか。手強いっすよ。(笑)

1)点火プラグの失火
 1-1.点火プラグ不良
 1-2.ハイテンションコードの不良
 1-3.ディスイトリビュータの(二次回路)ターミナル不良
 1-4.ディスイトリビュータの(一次回路)コンタクトポイント不良
 1-5.フルトランジスタ点火装置なら、トランジスタ回路不良(一次回路)
 1-6.点火コイルの不良
 1-7.点火プラグのアース不良
※一次回路:信号を出すための低電圧回路
※二次回路:プラグに火を飛ばすための高電圧回路

2)点火時期の狂い
 2-1.ディスイトリビュータの位置の不調節
 2-2.ディスイトリビュータの進角装置の不良

3)濃すぎる混合気
 3-1.キャブレターの総合的な不良
 3-2.各ジェットの不調節
 3-3.各ジェットの不良
 3-4.吸気バルブの作動不良
 3-5.排気バルブの作動不良
 3-6.カムプロファイルの選定不良
 3-7.吸入空気の瞬間的な目詰まり
 3-8.フロートチャンバーの誤作動
 3-9.加速ポンプ(ウェバー)の誤作動

4)圧縮圧力の不足
 4-1.ピストンリング不良による燃焼室の圧縮漏れ
 4-2.バルブシール不良による燃焼室の圧縮漏れ
 4-3.ピストン不良による燃焼室の圧縮漏れ
 4-4.排気バルブの作動不良
 4-5.吸気バルブの作動不良
 4-6.シリンダーヘッドガスケットの不良

5)低すぎる燃焼温度
 5-1.ガソリンの成分不良
 5-2.点火時期の不調節による遅延燃焼
 5-3.点火時期の不調節による早期着火

 このように、思いつきで挙げた項目だけでも山ほどの原因箇所が想定されます。それぞれの点検方法を書いたら一冊の本になってしまいそうなので(^^;、これらから可能性の高い項目をピックアップしてみましょうね。
 もしかすると、複合的な原因による症状かも知れません。

 やはり一番先に思いつくのは、点火に関する事柄です。デスビのコンタクトポイント、ハイテンションターミナル、進角機構。同じくありがちなのはハイテンションコード。プラグ自体。アース不良など。
 1本だけ「煤」という状況から、1-1,2,3,7が臭いっすね。

 次に、やはりスプリットウェバー。気化器です。
 カブりやすい状況にもよりますが、始動時やアイドリング時の発症なら、キャブのスロージェット、アイドルジェット。水温の高いときに起きるならフロートチャンバーの機能。アクセルを煽って起きるならポンプジェット。──など各ジェットのセットに弱点があるかも知れません。
 MGBのインテークフローは、1-2番シリンダーと3-4番シリンダーが、それぞれのインテークマニホールドから混合気の供給を受けます。
 スプリットウェバーの場合、各ジェットの機能を片方のベンチュリーだけで使うという贅沢な使い方ですから、前後キャブが完璧に同調していなかったら、たちどころに調子を崩してしまいます。高性能な代わりに、シングルウェバーより調整が非常に困難というワケですね。
 3-1,2,3,8,9の辺りを指した考察です。
 ちなみに「3-7.吸入空気の瞬間的な目詰まり」は、いわゆるチョーキングという技術で、ベンチュリーを瞬時に塞ぐことにより、一時的に濃度の高い混合気を作ることをいいます。カートレースなどの加速時には、ボクも使っていました(キャブの吸気口を手で塞ぎます)。

 圧縮関連では、述べたすべての可能性があります。
 慢性的に「煤」の症状が出るなら、疑ってみても良いかも知れません。いずれにしても古いエンジンでは、いつか遭遇する症状です。
 燃焼温度については、点火時期調節を完全に行うことで、ある程度信頼のおける環境ができると思います。ガソリンの劣化は論外。(笑)


 オイルキャッチタンクは、潤滑経路から漏出するエンジンオイルを排出させないよう、一つのタンクに集めるものですね。
 本来、潤滑経路から漏出するはずのないエンジンオイルが、なぜ漏れ出すのかを考えてみましょう。そうすると必要性が見えてくるかも知れません。

 結論を先に云うと、使った事がありますが、やめました。(笑)

 エンジンオイルはクランクケース下のオイルパンに溜められ、オイルポンプの吸引力により、オイルストレーナという吸引口から吸い上げられ、エンジン各部を潤滑するために配送されます。
 オイル孔は各部に設けられ、圧送されたオイルが孔から噴出します。潤滑の役目を終えたオイルは、各経路を通って引力によって再びオイルパンへと流れて溜まります。これがオイルの経路。
 4サイクルエンジンの場合、この経路が完全密閉だったら、オイルは、劣化しても減少はしません。しかしオイルは減ってしまいます。古いエンジンの場合は、大量に減ってしまう傾向があります。

 減ってしまうのは、まずピストンリングの中のオイルリングが、シリンダースリーブに付着したオイルをすべて掻き落とす事ができず、燃焼室に残り、混合気と一緒に燃やしてしまう事。
 もう一つは、バルブシールから漏れ込んだオイルが、同じく燃焼室で燃えてしまう現象です。
 この点を逆に見れば、潤滑経路は完全密封ではない──となります。


 さて、シリンダー内が圧縮上死点を迎え(実際にはその直前)点火プラグが発火すると、大きな爆発が起きます。エンジンがトルクを発生する瞬間ですね。
 このとき燃焼室では、膨大な排気ガス(燃焼ガス)が生まれ、それでピストンを押し下げ、パワーを出しています。ピストンが下死点まで下がり(実際には下死点の直前)、排気バルブが開いて、燃焼ガスは排気ガスとなって燃焼室からエキゾーストマニホールドへ出ていきます。
 燃焼ガスはしかし、ピストンを押し下げる際、ピストンリングの隙間から──また吸排気バルブシートの隙間から、僅かに漏れ出します。これをブローバイガス(吹き抜けガス)といいます。

 ブローバイガスは一酸化炭素や炭化水素を多く含み、非常に有毒なガスと云われています。
 そのためエミッション・コントロール(排ガス規制)を受けたエンジンは、EGR(エキゾースト・ガス・リサーキュレーション)というブローバイガスの循環システムを導入しました。
 EGRシステムの多くは、ブローバイガスをホースで集め、エアクリーナーやキャブレターのベンチュリー(通風孔)へ導入させ、混合気と一緒に燃焼室で燃やしてしまい、一方でインテークマニホールドの負圧を測定して点火時期などを制御するやり方をとっています。


 やっとオイルキャッチのお話しです。

 ブローバイガスの吹き出しと共に、エンジンオイルが一緒に排出されます。オイルキャッチタンクは、主にこのオイルを受けるタンクなのです。だから垂れ流しても良いのなら、付ける必要が無いのですね。
 競技などで検査を受ける場合は、(ブローバイガスは高回転のとき多く出ますから)オイルキャッチタンクの装備が義務づけられ、ボクもそれに従って装着──エントリーしていたワケです。

 MGBの場合、具体的にブローバイガスは、1)クランクケース、2)サイドカバー(プッシュロッドカバー)、3)ロッカーカバーの3箇所から吹き出します。
 1)クランクケースは、吹き出しても、そのまんまオイルパンへ落ちますから問題ありません。
 2)サイドカバーと3)ロッカーカバーは漏出したら外部ですので、オイルが減少するとか、エンジンブロックが汚れる、あるいは路面が汚れるなどの問題が出ます。
 というワケで、ブローバイガスのホースは、2)3)から出てくるガスと、一緒に出てくるオイルを受けているのですね。

 MGBの中でも18Gと18GAエンジン(初期のエンジン)は、EGRシステムを採用していない、オープンサーキットを持つエンジンです。ブローバイのホースは金属パイプになっていて、外気へ放出しています。ボクのがそれ。
 ところが問題が一点。
 放出するだけと思っていたブローバイの口は、ピストンの動きによってクランクケースの体積が変化するので、瞬間的に吸入する事があるのです──というよりブローバイ口は周期的に吸排気が行われているのです。
 吸入する際、当然ですが外気に混在した細かい砂やゴミを吸い込み、クランクケース内のオイルに混入します。そんなモノを含んだ潤滑油でエンジン各部を潤滑したら...そう、コンパウンドで削っているようなもの。各部のオイルシールは、たちどころに劣化するのですね。
 なので、ブローバイ口にもエアフィルターが必要となります。

 キャッチタンクは、その意味──潤滑経路を密閉し、きれいなオイルを保つ意味でも効果が期待できますね。

 キャッチタンクを装着するときの留意点は、次のような事です。
 ブローバイガスと一緒に排出されるオイルの容器ですから、オイルだけを捕まえて、ガスを放出しなくてはなりません。完全に密封してしまったら(キャッチタンクの内圧が上昇したら)、ブローバイガスは逃げ道を失い、シールの脆弱な箇所へ圧力をかけます。さしずめ、ロッカーカバーのガスケット、サイドカバーのガスケット、オイルパンのガスケットという箇所。
 圧力がかかったガスケットは耐えきれなくなり、密閉できず、そこからガスとオイルが漏れ始めます。

 これさえクリアすれば、「汎用ホース」でも充分に機能します。ミニに乗っている友人は、ママレモンの容器でキャッチタンクを自作していました。尤も、熱で塩ビ容器が変形し、たちどころに不能となりましたが。(笑)
 ただしホースは、耐油性、耐熱性のあるものを選びましょう。
 と、こんな感じの長いレクチャーでした。m(__)m


 ボクがオイルキャッチタンクを外した理由は、一番は無粋と思ったからでした。(^^;
 さんざん改造もしましたが、クルマが壊れてしまうので、エンジン周りをオリジナルに戻したのですね。エアクリーナーだけはK&Nですが。
 そこでオイルキャッチタンクを外し、そのかわりブリーザーフィルターを装着しました。これはブローバイホースの口につける、砂よけフィルターです。
 ブローバイ経路はエンジン出力を向上させるものではないので──と云うか正確には、高出力発生時の耐久性を高め、排出オイルを阻止する目的なので、オイル汚れに構わないのなら、必ずしも装着に必要はありませんね。
 というワケで──

》1.オイルキャッチは付けないとならない?

 答えはNOです。必要はありません。

》2.MG−Bの症状は、4本あるプラグの内1本だけカブり、乾いた煤が付着している。ブローバイガスの取り回しは、エアクリーナーにホースが入れてあるが、それが原因かと思い、オイルキャッチタンクを設けたい。

 上記の通りです。直接の原因ではありません。

》3.取り回し事態も、これで良いと判断できない?

 取り廻しは、その状態でOKですよ。


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ふじた岩ぞう☆:∵'~
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